【フラッガー】山崎岩男(山崎椅子店)
【時】11月5日(日) 9:00~18:00 ※12:00~13:00は昼休憩のため閉店
【場】山崎椅子店 神戸市中央区国香通2-2-4(078-231-6032)
【参】参加無料・予約不要

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春日野道で店を構えて今年で50年になる「山崎椅子店」。神戸マイスターに認定された店主の山崎さんは、近頃の若い人が何を考えているのか、気になっているそうだ。以前、ある若者が勤めた企業を辞め、家具作りを学びに山崎さんの元に来たが、すぐに辞めてしまったことがあるらしい。山崎さんは「一人でものを作りたかったのかもしれない。でも、椅子はものを言わないけれど、販売では人と関わるのになあ。」と語った。山崎さんの目には、彼は自信が持てないように映った。
話を伺っていると山崎さんは、時代の流れに伴い人々の価値観が変化してきていることに気がつき、注意深く観察しているのだと伝わってきた。例えば家具は、大手家具会社が作る格安家具がよく売れるようになった。元の値段が安いので、わざわざ修理をして使い続ける人は少ない。また、インターネット上の、アンティーク家具の売買では、写真と現物があまりに異なるトラブルもある。きれいな写真を見て安値で買ったのに、ぼろぼろの椅子が届き、修理を依頼してきた人がいたそうだ。世知辛い話である。
そして、人との関わり方とお金の使い方も変わったと、山崎さんは語る。直接会うことは減っていても、スマホの通信費にはお金をかける若者たち。山崎さんは「近頃はファミレスも減っているらしいなあ。なんで、人と話さなくなったのかなあ。」と話す。安物ばかりを買うことや、「もの」ですらないものにお金を支払うことが本当に豊かなことなのか。私の中にも疑問がわいた。
山崎さんは流れるような手つきで生地を切り、縫い、木に穴を開け、組み立てる。店内は天井まで素材が積まれ、修理待ちの椅子でいっぱいだ。中には100年前の椅子もあった。
「若い人の話がもっと聞きたいなあ。」零すように言った言葉はきっと本心だ。椅子作りの技術や信念についてはもちろんのこと、そもそも「価値」とは何なのかを、山崎さんは若い人と話したいのだ。 (柴山ルポ)