【フラッガー】矢野衣美(画家)
【時】11月5日(日)10:00〜17:00
【場】神戸市灘区篠原本町5丁目4-8-101(white.rabbit.snowman@gmail.com)
【参】参加無料・予約不要

例年通りアトリエの公開をします。今年は頑張って作品展示をアトリエ内で行う予定です。お茶とお菓子でも食べてのんびりしていただけたらなぁと思います。

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矢野さんのアトリエは、いつもそこにある「白」がきれいだ。その白は潔癖なものではなくて、生活の匂いがする、不完全だけど愛おしい感じの白だ。半透明のカーテンが揺れ、白い壁紙に光が触れる。小さな菜園ではいろいろな植物が育つ。現実的には生活と制作の両立に悩むこともあるようだが、矢野さんは素敵な生活のはしっこをちゃんと掴んでいる人だと思った。私から見ると、とても羨ましいことだ。
真面目な矢野さんは、ずっと絵の話をしていた。大学1年生のデッサンの授業では、床に落ちた消しゴムから「おれ、ここにいるよ」と呼ぶ声が聞こえた気がして、その様子を描いたという。矢野さんの絵は静物画なのかと言えばそうなのだが、従来の静物画にはない何かを描きたいそうだ。質の描き分けではなく、再現描写でもない。言葉を得ていないということには、まだ描いていない白紙のような明るさがある。ちなみに矢野さんは画材にも非常に詳しく、1つ聞けば5つの情報が返ってくる。久しぶりに、画学生のように絵の話ばかりして過ごした。
そうしてまたアトリエを見回すと、その辺りにある何でもないようなガラスのコップや皿、布巾やタオル、こまごまとした物たちがしっかりと存在していることに気がつく。画家の目を借りているような不思議な体験だ。矢野さんは、物を愛しているのだと思った。この室内の安心感は、物たちが安心しているから生まれるのかもしれない。それは貴重なことだと思う。絵を描く人も描かない人も、一度この画家の視点から世界を見てみてほしい。(柴山ルポ)